2015年04月28日
第17回 大井川鐵道沿線でポートレートを撮る
レトロな駅名標も立派なアクセントになる
(フルサイズ一眼レフ 85mm 地名駅 地図のG地点)
静岡県中部を走るローカル線の大井川鐵道。
沿線には昭和の面影を残す鉄道施設や建物が点在しています。
これらの風景は、映画やドラマのロケ地として選ばれ活用されてきました。
今日は、大井川鐵道をロケ地として利用したポートレート(人物撮影)に挑戦します。
ひと味違った旅の記念写真を残してみませんか?
|地名駅名標のポートレート
地名(じな)駅は1930年に開業した島式ホームを持つ駅です。駅構内の千頭(せんず)駅方向には長さがおよそ11mの短いトンネルがあります。トンネルはかつて存在した川根索道と大井川鐵道本線の交差地点にあり、索道から荷物が落下した際、通過列車を守るためにつくられたもの。
現在は「日本一短いトンネル」と呼ばれています。
冒頭の写真はホームの千頭端にある駅名標を利用してみました。
ここでは、駅に親しみが湧くような写真とするために、意識を最初からモデルに向けるのではなく、モデルのある風景をとらえるつもりでアングルを考えます。
そこで、「じな」の駅名標にモデルの頭を少しつけて撮影してみました。
第16回の記事と考え方は同じで、主要な被写体に意識を集中させすぎないことがポイントかと思います。
詳しくは第16回「大井川鐵道 桜撮影のアングル」(こちら)をご覧ください。
|望遠レンズ/大口径レンズを活かしたポートレート
「日本一短いトンネル」をバックに撮影。
川根索道は大正15年から昭和13年まで、現在の藤枝市から川根本町を結んでいた
(フルサイズ一眼レフ 85mm 地名駅 地図のG地点)
70mm以上の望遠レンズで小さい絞り値(f値)を選び、上記のような大きさで人物を撮影すると背景を大きくぼかすことができます。
この作例では、85mmの大口径レンズ(レンズの開放F値が2.8や1.4といったレンズ)を用いました。絞り値はf2.5です。
また、動きを表現するために、モデルに自由に動いてもらいながらシャッターボタンを押していきました。このポーズはモデルが偶然とってくれたものですが、そのときに「今のポーズ、もう一回!!」などとリクエストしてみると良いシーンが残せるかもしれません。
#レンズは絞り値の数値が小さくなるほど、ピントを合わせた前後がボケるようにつくられています。
|モノクロ写真で撮影意図をストレートに表現する
広角レンズで遠近感を強調した
(APS-C コンパクトカメラ 23mm 地名駅 地図のG地点)
モノクロモードで撮影すると、カラー写真とは異なる表現が可能です。光の強弱を白と黒のグラデーションで表現する手法であるが故に、独特の味わいある絵が生まれます。
グリーンフィルターモードを備えたカメラであれば、肌や唇を落ち着いた感じに撮影できるので、ポートレート撮影には好適です。
写真をより印象的にするために、このときはモデルにレンズを見つめてもらいました。よく「目力」といいますが、瞳の印象を強めるとこのような効果を得ることができます。
また、ここでもレンズの絞り値をf2.8として、つまり、小さい値を選び、人物が浮き上がるようにしています。
|駅舎のガラスをフィルターにして幻想的に表現する
地名駅待合室にて
(APS-C コンパクトカメラ 23mm 地名駅 地図のG地点)
待合室のガラスごしに撮影をしてみました。ガラス面とモデルの背景がボケるよう絞り値はf2.0とし、ピントはカメラに近い方の眼に合わせています。人物や動物の撮影では、カメラに近い方の眼にピントを合わせることが基本とされています。
ガラスをフィルター代わりに用いることで、一風変わった写真になりました。
|広角レンズでスナップ撮影を
旧型客車にて。旅の風景はいつの時代も変わらないのかもしれない
(APS-Cコンパクトカメラ 23mm 新金谷行「かわね路号」)
広角レンズは、文字通り広い画角(範囲)を撮影することができるレンズです。この作例では、23mm(フルサイズのカメラで35mm相当)のレンズを使用しました。絞り値をF8以上にすることで、画面の手前から奥までピントがあった写真を撮影できます。実は上二つのモノクロ写真も同じレンズを使っているのですが、被写体との距離を変えることによって、遠近感を強めたり弱めたりしながら撮影することが可能です。
スナップ撮影とは、目にした一瞬の様子を撮影することです。車内でスナップ撮影をすると決めたら、カメラをすぐに撮影できる状態にしておきます。事前に試し撮りをして、写す写真の明るさを調整しておくと良いでしょう。
この写真の構図を決定した手順ですが、撮影意図を「旧型客車の木の枠でつくられた座席が楽しく使われている点」としたため、最初に座席とカメラの位置関係を考えました。その上で、表情が良いタイミングを狙ってシャッターボタンを押しています。
走行中の車内は、駅間にある木々やトンネルなどの影響で光の状態が目まぐるしく変化します。何度も列車に乗ると、どの場所を走っている時に撮影しやすい明るさになるのかを覚えることができるはずです。
なお、車内での撮影はまわりの乗客や列車の揺れに十分注意してください。
|笑顔を見つけよう
必ず笑顔が見られる列車。それが「かわね路号」だ
(フルサイズ一眼レフ 85mm 新金谷行き「かわね路号」)
今回はポートレート撮影について考えてみました。
一緒に旅をする人々の自然な姿や印象的な姿を撮影することは、良い記念にも記録にもなると思います。
特に難しいのが、モデルにどんな風に声をかけながらシャッターボタンを押したらよいのか?というところかもしれません。
僕の場合は、シリアスに撮りたいときは静かに「いいですね」「そのまま」「今のポーズでもう少し続けます」などと話しかけ、笑顔が欲しいときは反対にたくさん声をかけるようにしています。「いいね!」「スマイル!」「エクセレント!」といった簡単な単語を連呼するだけでも思わず笑ってもらえることもあります。
ユーモアを交えながら撮影をすると、よりいっそう楽しい写真ができることでしょう。
|ロケーションガイドを活用しよう

大井川鐵道のホームページには映画・ドラマのロケ地を紹介するページがあります。鉄道施設や周辺の撮影スポットを紹介した大井川鐵道沿線ロケーションガイド(PDFファイル)をダウンロードすることができますので参考にしてみてください。
▼大井川鐵道 ロケ地情報
http://www.oigawa-railway.co.jp/commodification_right.html
大井川鐵道沿線撮影マップ
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2015年03月24日
第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル

「かわね路号」がやってくると一斉にカメラが向けられた
(フルサイズ一眼レフ 200mm 家山駅 2014年 地図のR地点)
静岡県中部を走るローカル線の大井川鐵道。
2014年3月から始まった本連載も一年が過ぎ、ふたたび桜の季節がやってきました。
全国的にみても桜の本数が多いと言われる大井川鐵道の沿線。
今日は桜、そして、列車たちを、ファインダーの中でどのようにまとめたら良いか考えてみたいと思います。
2014年の記事(第1回 春爛漫の大井川鐵道)では、家山駅、駿河徳山駅、田野口駅の撮影スポットをご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
|俯瞰撮影でローカル線の魅力を引き出す

福用~大和田間 お茶ぼっこ(喫茶店)の前から桜並木と大井川をのぞむ
(2011年 APS-C一眼レフ 21mm 地図のS地点)

駿河徳山~田野口間 新金谷行「かわね路号」。正島桜並木と呼ばれる並木を俯瞰する
(APS-C一眼レフ 300mm 2014年 地図のT地点)
俯瞰(ふかん)撮影とは、高いところから見下ろして撮影することです。この方法では、線路がどのような地域を走っているのかも写し込むことができます。画面の中で多くを占める空や山を、どの程度いれるかがポイントになるでしょう。
S地点からの作例は、列車の背景になる空と山を、おおよそ画面の1/3で占めるように構図を決めました。また、T地点からの作例では画面を四つに分けて考え、そのうちの1/4を列車と桜並木に割り当てて撮影しています。
このように、画面を分割して考えると構図を決める時にまとめやすいのではないかと思います。
なお、二つの撮影地点の光線状態ですが、S地点は、通過時間がお昼を過ぎる「かわね路1号」以降の列車が良いでしょう。春先の11時ごろまでは光が列車の左側から差し込むため、車体の右側が影になりやすいのです。
T地点からの撮影では、午後の順光線を利用するのが定番です。
|桜を主役にした作画例

下泉駅南側の一本桜。この撮影は17時頃。曇りの夕方はしっとりと写すことができる
(APS-C一眼レフ 85mm 2009年 地図のU地点)

崎平駅。ここにも立派な桜が咲く。列車の向こう側には菜の花も咲いていた
(APS-C一眼レフ 28mm 2014年 地図のV地点)
これらの写真は、どちらも一本の桜を中心にまとめてみました。
画面のなかで桜の分量と列車の分量の比率を変えてみると印象が大きく変わります。
方法は二つあり、レンズの焦点距離を変化させる、あるいは自分が近づいたり離れたりしてみてもOKです。
どのかたちの車両が来るかはその時にならないとわかりませんが、一緒に写る列車の色で桜の見え方は大きく変わると言えそうです。
|桜は模様と考えながら、望遠レンズで車両のアップを撮ってみる

発車間際のC10 8号機のボイラー付近。2011年の秋まで新金谷行き列車は機関車が逆向き運転だった
(APS-C一眼レフ 300mm 2009年 家山駅 地図のR地点)

旧型客車の窓が桜のフレームに見えるように作画した
(フルサイズ一眼レフ 135mm 2014年 家山駅)
上の煙突のアップの写真を撮影するときに思いついた事は、多くの花びらが散ってしまったあとの桜の美しさを、日本の伝統的な色調で表現できないかということです。
望遠レンズは、ピントを合わせた場所以外は大きくボケるところに特徴があります。
そこで、ピントは煙突に合わせて、背景の桜の枝と花びらにある様々な色がボケて混ざるように撮影してみました。
日頃から撮影とは直接関わりがなさそうなものでも、興味をもって触れている事で撮影時にこうしたアイディアが浮かぶことがあるかもしれません。
ちなみに、日本の伝統色は和色大辞典などのサイトで確認することができます。
客車の窓の桜の写真は、桜が写っているガラス面にピントを合わせて撮影してみました。この写真を見た人が、まず桜に目が行くように、撮影後、画像の周囲を暗く処理しました。
こうした処理をビネット処理と言い、デジタルカメラが登場する以前の古いレンズを活用しても同様の効果が得られます。
この写真も望遠レンズを使っています。望遠レンズは周囲の不要な物の写り込みを整理しやすいので、伝えたいポイントがよりハッキリとしてくると思います。
|人物を絡めて旅情を表現する
冒頭の家山駅の写真ですが、列車を中心に作画したくなるシーンでもありますね。
ですが、それだけですといわゆる「列車そのものを説明する編成写真」となってしまい、情感漂う家山駅の魅力が表現できません。
そこで、桜、ホーム上の人、列車の三つの要素がうまくまとまるアングルを考えてみました。それが、旅情、つまり、大井川鐵道の雰囲気を表現することのひとつではないかと思えたからです。
そこで、撮ろうと思ったアングルから上体を少し引き、改めて、ファインダーの四隅を確認して眺めてみることを数回行いました。この動作の間に、画面に取り入れたい要素と他の要素がファインダーの中で変化するので、その中から伝えたい要素(撮りたいもの)が引き立つアングルを探します。
構図を考える時、意識が最初から列車にあると、車両が画面から見切れてしまうことに抵抗を感じ、列車全体を写そうとしてしまいます。列車の編成写真を意図するならば問題ないのですが、ここでは、桜や駅、そして「かわね路号」がもつ情感を撮影する事を目的としました。
その方法として、被写体の全てを写さず、思い切って見切ったわけですが、それは桜と旧型客車の編成部分から広がる画面の外の世界を、写真を見る人に想像してもらいたかったからです。
また、何気ない人の姿が写っているとより実感的な情景となるので、多くの人にとって受け入れられやすい写真になるのではないかとも考えています。
かなり主観的に書いてしまいましたが、撮影のなんらかの一助になれば嬉しいです。

「かわね路号」に乗り込む親子。このあとすぐに汽笛が鳴り響いた
(フルサイズ一眼レフ 28mm 2014年 家山駅)
今回の投稿では、構図にテーマを絞ってまとめてみました。
構図の決定はカメラマンごとに手順が異なるので個性が出る部分です。
理想の写真を目指して、撮影を楽しみましょう!
ところで、大井川鐵道のホームページによると「創立90周年記念 大井川鐵道写真コンテスト」が開催されており作品を募集しています。応募の締め切りは2015年4月30日(必着)。優秀作品は2016年版のカレンダーに写真が採用されます。
沿線を旅して大井川鐵道の魅力に触れたら、写真でそれを誰かに伝えてみませんか。
きっとその先に人と人との楽しい交流が広がっていくと思います。
詳しくは下記をご覧ください。
▼創立90周年記念 大井川鐵道写真コンテスト 作品募集
http://www.oigawa-railway.co.jp/20150430photo_contest.html
最後になりましたが、大井川鐵道沿線の桜の開花情報はこちらで確認できます。
▼tenki.jp 「家山桜トンネル」 (日本気象協会)
http://www.tenki.jp/sakura/5/25/55307.html
大井川鐵道沿線撮影マップ
Posted by 日刊いーしず at 10:33