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2016年03月22日

第19回 スハフ43 ~鉄道模型初心者のための大井川鐵道~



静岡県中部を走るローカル線の大井川鐵道。
SLが走る大井川本線には青地にクリーム色の帯の入った珍しいスハフ43と呼ばれる客車が2両います。
3月に行われたSLフェスタ2016では、電気機関車が牽引する普通列車として運行されたこともありご覧になられた方も多いかもしれません。また、現在では全国的に見ても客車が牽引する列車は貴重な存在ですね。
今回はこのスハフ43のNゲージ模型の製作方法をご紹介しながら、歴史的な客車の細部にまで目を向けてみたいと思います。


SLフェスタ2016で運行された客車列車

スハフ43は今から60年近く前の昭和33年頃の上野と青森を結ぶ「はつかり」や山陽本線の「かもめ」で使われた車両です。スハフの名称は国鉄時代の車両記号がそのまま使われており、最初の「ス」は車両の自重を示す記号の一つで37.5t以上42.5t未満であることを示しています(ただし、現在は自重34.2tの記載となっており「ス」ではなく、「オ」の記号が該当します。つまり、オハフ43となりそうなのですが、これは不思議ですね。60年経って軽くなったのでしょうか?ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてくださいね)。
続いて、ハは普通座席車、フは緩急車を意味します。緩急車とは車掌室があり、手ブレーキをかけることのできる車両のことです。



模型製作にあたっては、第10回鉄道模型で楽しむ大井川鐵道でトーマス号の模型をキットではなく完全な手作りで制作したNさんにアドバイスをいただきました。


|グリーンマックスの板状未塗装キット No.133

スハフ43の模型ですが完成品は現在は販売がありません。模型メーカーのグリーンマックス(以下GM)の製品No.133がスハフ43の板状未塗装キットですので、これに(初めての模型づくりにも関わらず)挑戦することとします。
本稿では板状未塗装キットの取扱説明書を補足する形で進めていきます。


パッケージを開けるとランナーに部品が収まっている。黒い部品は床下機器だ


|まずは部品をランナーから取り外す




誤って部品を切らないように慎重に切り取ろう

部品は部品を支えるランナーからニッパーで丁寧に切り取ります。部品を切り取るときの注意点は、最初にランナーから切ることだそうです。力は大きい方から小さい方へかかるため、切り取るときの破損を防ぐために大まかに部品を切り取り、次に細かい不要な部分を切り取って、その後ヤスリでニッパーで切り取れなかった不要な部分を削って仕上げます。








ヤスリがけは少しずつ削りながら進めていく。時間をかけて作業しよう


|左右の側板、屋根板は車体と平行にヤスリがけをしよう

側板、屋根板も妻板と同様に部品を取り外します。このときもヤスリがけを行いますが、ここではヤスリを車体の進行方向に向けて使います。この方が、万一削りすぎてしまったときのダメージが少なくなるようです(筆者は車体と直角に削ってしまい削りすぎてしまいました)。








実際に作業してみたところ、ひとつの部品を仕上げるのに15分ほどかかった。腰を落ち着けてじっくりと削ろう


|部品を仮組みし、接着

それぞれの部品を無事ランナーから取り外し不要な部分を削ることができたら、今度は仮組みしてみます。
仮組みとは接着剤でいきなり留めずに、最初に部品同士をあてがってきちんと組めるかどうかを確認することです。
この仮組み時に部品の不要な削り取れていない部分を見つけ出し修正していきます。

仮組みをして問題がないことを確かめることができたら接着をしますが、接着剤は少なめに使いましょう。
今回はタミヤセメント(角)を使って接着していますが、接着剤を部品に塗るときはキャップ付属の刷毛で点を打つように使いました。

なお、車体は妻板と側板をL字形に組んだ状態で二組作り、その二つを組み合わせてロの字にした後に、最後に屋根を取り付けます。接着剤がきちんと流れていない部分は組んだ後にタミヤセメントの流し込みタイプ(緑キャップ)を使用して車体の裏側から部品の隙間に少しずつ流し込んだところ、きれいに接着できました。



屋上にあるベンチレーター(換気口)は、取扱説明書に寸法が出ているので、金属製の定規を用いてボールペンで屋根を縦に2分割するように線を引き、印をつけてから接着した。ベンチレーターを屋根に取り付ける際はピンセットを使うと作業しやすい(写真は、塗装のための下塗り塗料を塗ったときのもの)

次回は、塗装行程を中心にまとめてみたいと思います。






Posted by 日刊いーしず at 17:09

2016年01月13日

第18回 SLナイトトレインで蒸機夜景を撮る 2016年改訂版



静岡県中部を走るローカル線の大井川鐵道。
この路線では毎冬「おでん列車」と並び、蒸機ファンにはたまらない企画列車「SLナイトトレイン」が走ります。このイベントは夜間に蒸気機関車牽引の貸切列車を運行し撮影会を行うもので冬の恒例行事となっています(完全予約制)。
今回は「SLナイトトレイン」のアウトラインとこれまでのナイトトレインを振り返りながら、蒸機夜景の撮影についてまとめてみたいと思います。(本稿は2015年1月7日の第12回の原稿を改訂したものです)


|SLナイトトレイン(2016年)のアウトライン

2016年の開催は2回。1月23日(土)と2月13日(土)です。
行程は16:25頃に新金谷駅を出発、夕暮れを千頭目指して走ります。千頭駅到着後は、ライトアップされた転車台と側線(ホームのある線路の隣の線路)で牽引機の撮影会を行い、21:10頃に新金谷駅に戻ってきます。


バック運転のC10 8号機。
大井川鐵道で運行される蒸気機関車はすべてバック運転も考慮した設計になっている


注目の牽引機ですが、今年は除煙板(デフレクター)を九州地区で活躍していた型(通称 門デフ/門司鉄道管理局式デフレクター)に変更したC11 190号機が充当予定となっており注目が集まることと思われます。
190号機の門デフについてはこちらのページ【C11190 門デフ運転について】に解説されています。

1月23日の往路はバック運転の蒸気機関車が客車を牽引する予定です。客車と蒸気機関車の前部が向かい合うため、シリンダー周辺の音を収録するのに適した企画編成となり、撮り鉄だけでなく録り鉄も楽しめる内容となっています。また、1月23日、2月13日ともに荷客合造車のオハニ36が連結されます。


オハニ36の荷物室。2015年撮影

こちらは、客車の半分が荷物車となっている車両で現役時代の東海道本線では魚介類なども運ばれました。普段は見ることができない荷物室も見学でき輸送で使われた木箱も再現されています。
オハニ36を夜間に見学(撮影)できることは非常に珍しく必見です。


|あると便利な撮影機材



千頭駅到着後の撮影会ですが、撮影会の前に点呼後、二班に分かれて撮影するための班分けがあり、そのときにヘルメットを受け取ります。撮影は線路上に立たせてもらえるのですが、そのための安全対策です。

さて、夜間の撮影であると便利なものですが、まずは、足元を照らすランプ。
構内はライトアップされているものの足元は暗いためバラスト(線路上の砂利)や枕木、レールで転倒しないためにも、またカメラバックの中身を確認するためにも、小さなランプを持参すると便利です。この時にランプに赤い布やシートを張っておくと眼の負担を軽減できます。

また、この時期の夜の千頭は気温が氷点下になることもありますので防寒対策が必要です。気温が下がるとカメラのバッテリーは性能が出なくなる場合もありますので、予備の充電池があった方が安心です。
最近の電池性能はすばらしいですが、念のため予備電池はポケットに入れて温めておき場合によって交換して使用します。

最後に三脚ですが蒸気を長時間露光で流して撮影する場合は必須です。
今日の作例のうち蒸気が流れている写真はシャッターを明けっ放しにする長時間露光で撮影しています。長時間露光の際は、ケーブルスイッチ、リモコン、カメラの機種によっては2秒セルフタイマーなどを用いてカメラぶれを防ぐ工夫があると確実です。


|ライトアップされた転車台

千頭駅の転車台は人力で回転させるものです。冒頭の動画は2011年のものですが、この日はC11 190号機が充当されました。転車台で転回するあいだヒューン、ヒューンと呼吸をしているような音が聞こえます。
これはコンプレッサーの作動音でブレーキを動かすために使われる圧縮空気を作り出す音。
C11 190号機は大井川鐵道の蒸気機関車の中で作動音がもっとも上品な響きです。
このときは、駅周辺のクルマの音もほとんどなく、神秘的ですらありました。




|ドレインからの蒸気を狙う

冒頭の写真は2015年のナイトトレインからC10 8号機です。
蒸気機関車の撮影ではドレインからの蒸気が写し込まれると迫力が倍増します。
ドレインとは停車中にシリンダーにたまった水を外に吹き飛ばす操作の事で発車時によく目にするシーンです。
ここ数年のナイトトレインの撮影会では転車台、側線上でそれぞれドレインから蒸気を機関士さんが出してくれるのですが、この年のドレインは気温が低いことも手伝ってご覧のような写真が撮影できました。

また、蒸気機関車の蒸気は、煙突、コンプレッサーの排気筒や蒸気発電機からも発生します。
この辺りからの蒸気もからめて撮影することも考えられるでしょう。
さらに月明かりをうまく利用できると幻想的な写真を撮影することもできます。
第12回記事の写真をご覧ください)

なお、月明かりについて調べてみると2016年の1月13日の夕暮れ時は細い月が西の空にあるため月明かりはほぼありません。2月23日は、ほぼ満月で撮影時間はちょうど月明かりに照らされる撮影条件となります。

光の当たった蒸気は思いのほか明るくカメラのヒストグラム表示機能などを利用して露出オーバーに気をつけながら撮影をするのがコツです。



こちらは2011年のC11 190号機です。光線状態に注意しながら、車体前部のシリンダーケース下のドレインから蒸気があがったタイミングで撮影しました。実は車体の前方には多くの参加者がいるのですが、ドレインからの蒸気で上手く隠れてくれています。



再び2013年のC10 8号機の第一動輪です。ライトアップのお陰でメカニカルな質感描写が可能となります。黄金色に撮影するため、ホワイトバランスを太陽光に近い4950K程度に調整しています。動輪の光り方はライトアップの照明、機関車、カメラの位置関係で変わりますので立ち位置を変えながら好みの作画をすると良さそうです。


|千頭駅構内側線で蒸気機関車全景を撮影する



転車台での撮影会の後、機関車は側線に移動します。
この写真は2014年のものですが、8秒露光しました。蒸気が翼のように写っています。
蒸気の流れ方は毎回異なるため、時間の限り撮影してみることをオススメします。

|超高感度で手持ち撮影に挑戦

最後は2011年のC11 190号機が転車台から移動するシーンです。
カメラのISO感度を12500まであげて、シャッター速度を1/125秒として手持ち撮影しました。
ドレイン、煙突からの蒸気が車体を包み隠しながらも尾灯が印象的です。



「SLナイトトレイン」は、まるで生き物のようだと形容される蒸気機関車の撮影を鉄道会社が全面的にバックアップする貴重な機会です。それだけに内容も濃く、撮影時間はあっという間に過ぎていきます。
同道の参加者と譲り合いながら、イメージが上手く定着できるよう撮影できれば最高ですね!

大井川鐵道 SLナイトトレイン(特選ツアーのページ)
http://www.oigawa-railway.co.jp/choice_tour.html



Posted by 日刊いーしず at 10:24

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