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2015年03月24日

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
 「かわね路号」がやってくると一斉にカメラが向けられた
(フルサイズ一眼レフ 200mm 家山駅 2014年 地図のR地点)


静岡県中部を走るローカル線の大井川鐵道。
2014年3月から始まった本連載も一年が過ぎ、ふたたび桜の季節がやってきました。
全国的にみても桜の本数が多いと言われる大井川鐵道の沿線。
今日は桜、そして、列車たちを、ファインダーの中でどのようにまとめたら良いか考えてみたいと思います。

2014年の記事(第1回 春爛漫の大井川鐵道)では、家山駅、駿河徳山駅、田野口駅の撮影スポットをご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。


|俯瞰撮影でローカル線の魅力を引き出す

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
福用~大和田間 お茶ぼっこ(喫茶店)の前から桜並木と大井川をのぞむ
(2011年 APS-C一眼レフ 21mm 地図のS地点)



第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
駿河徳山~田野口間 新金谷行「かわね路号」。正島桜並木と呼ばれる並木を俯瞰する
(APS-C一眼レフ 300mm 2014年 地図のT地点)


俯瞰(ふかん)撮影とは、高いところから見下ろして撮影することです。この方法では、線路がどのような地域を走っているのかも写し込むことができます。画面の中で多くを占める空や山を、どの程度いれるかがポイントになるでしょう。

S地点からの作例は、列車の背景になる空と山を、おおよそ画面の1/3で占めるように構図を決めました。また、T地点からの作例では画面を四つに分けて考え、そのうちの1/4を列車と桜並木に割り当てて撮影しています。
このように、画面を分割して考えると構図を決める時にまとめやすいのではないかと思います。

なお、二つの撮影地点の光線状態ですが、S地点は、通過時間がお昼を過ぎる「かわね路1号」以降の列車が良いでしょう。春先の11時ごろまでは光が列車の左側から差し込むため、車体の右側が影になりやすいのです。
T地点からの撮影では、午後の順光線を利用するのが定番です。


|桜を主役にした作画例

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
下泉駅南側の一本桜。この撮影は17時頃。曇りの夕方はしっとりと写すことができる
(APS-C一眼レフ 85mm 2009年 地図のU地点)


第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
崎平駅。ここにも立派な桜が咲く。列車の向こう側には菜の花も咲いていた
(APS-C一眼レフ 28mm 2014年 地図のV地点


これらの写真は、どちらも一本の桜を中心にまとめてみました。
画面のなかで桜の分量と列車の分量の比率を変えてみると印象が大きく変わります。
方法は二つあり、レンズの焦点距離を変化させる、あるいは自分が近づいたり離れたりしてみてもOKです。

どのかたちの車両が来るかはその時にならないとわかりませんが、一緒に写る列車の色で桜の見え方は大きく変わると言えそうです。


|桜は模様と考えながら、望遠レンズで車両のアップを撮ってみる

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
発車間際のC10 8号機のボイラー付近。2011年の秋まで新金谷行き列車は機関車が逆向き運転だった
(APS-C一眼レフ 300mm 2009年 家山駅 地図のR地点)


第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
旧型客車の窓が桜のフレームに見えるように作画した
(フルサイズ一眼レフ 135mm 2014年 家山駅)


上の煙突のアップの写真を撮影するときに思いついた事は、多くの花びらが散ってしまったあとの桜の美しさを、日本の伝統的な色調で表現できないかということです。
望遠レンズは、ピントを合わせた場所以外は大きくボケるところに特徴があります。
そこで、ピントは煙突に合わせて、背景の桜の枝と花びらにある様々な色がボケて混ざるように撮影してみました。

日頃から撮影とは直接関わりがなさそうなものでも、興味をもって触れている事で撮影時にこうしたアイディアが浮かぶことがあるかもしれません。
ちなみに、日本の伝統色は和色大辞典などのサイトで確認することができます。

客車の窓の桜の写真は、桜が写っているガラス面にピントを合わせて撮影してみました。この写真を見た人が、まず桜に目が行くように、撮影後、画像の周囲を暗く処理しました。
こうした処理をビネット処理と言い、デジタルカメラが登場する以前の古いレンズを活用しても同様の効果が得られます。
この写真も望遠レンズを使っています。望遠レンズは周囲の不要な物の写り込みを整理しやすいので、伝えたいポイントがよりハッキリとしてくると思います。


|人物を絡めて旅情を表現する

冒頭の家山駅の写真ですが、列車を中心に作画したくなるシーンでもありますね。
ですが、それだけですといわゆる「列車そのものを説明する編成写真」となってしまい、情感漂う家山駅の魅力が表現できません。
そこで、桜、ホーム上の人、列車の三つの要素がうまくまとまるアングルを考えてみました。それが、旅情、つまり、大井川鐵道の雰囲気を表現することのひとつではないかと思えたからです。

そこで、撮ろうと思ったアングルから上体を少し引き、改めて、ファインダーの四隅を確認して眺めてみることを数回行いました。この動作の間に、画面に取り入れたい要素と他の要素がファインダーの中で変化するので、その中から伝えたい要素(撮りたいもの)が引き立つアングルを探します。

構図を考える時、意識が最初から列車にあると、車両が画面から見切れてしまうことに抵抗を感じ、列車全体を写そうとしてしまいます。列車の編成写真を意図するならば問題ないのですが、ここでは、桜や駅、そして「かわね路号」がもつ情感を撮影する事を目的としました。

その方法として、被写体の全てを写さず、思い切って見切ったわけですが、それは桜と旧型客車の編成部分から広がる画面の外の世界を、写真を見る人に想像してもらいたかったからです。

また、何気ない人の姿が写っているとより実感的な情景となるので、多くの人にとって受け入れられやすい写真になるのではないかとも考えています。

かなり主観的に書いてしまいましたが、撮影のなんらかの一助になれば嬉しいです。

第16回 大井川鐵道 桜撮影のアングル
「かわね路号」に乗り込む親子。このあとすぐに汽笛が鳴り響いた
 (フルサイズ一眼レフ 28mm 2014年 家山駅)


今回の投稿では、構図にテーマを絞ってまとめてみました。
構図の決定はカメラマンごとに手順が異なるので個性が出る部分です。
理想の写真を目指して、撮影を楽しみましょう!

ところで、大井川鐵道のホームページによると「創立90周年記念 大井川鐵道写真コンテスト」が開催されており作品を募集しています。応募の締め切りは2015年4月30日(必着)。優秀作品は2016年版のカレンダーに写真が採用されます。

沿線を旅して大井川鐵道の魅力に触れたら、写真でそれを誰かに伝えてみませんか。
きっとその先に人と人との楽しい交流が広がっていくと思います。
詳しくは下記をご覧ください。

▼創立90周年記念 大井川鐵道写真コンテスト 作品募集
http://www.oigawa-railway.co.jp/20150430photo_contest.html

最後になりましたが、大井川鐵道沿線の桜の開花情報はこちらで確認できます。
▼tenki.jp 「家山桜トンネル」 (日本気象協会)
http://www.tenki.jp/sakura/5/25/55307.html

大井川鐵道沿線撮影マップ




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Posted by 日刊いーしず at 10:33

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